SSPA(Solid State Power Amplifier)の設計は機能ごとに分けて考えよう ~高周波回路設計はブロック分けですっきり理解~

集中定数回路の設計経験のある技術者が、SSPAなどの高周波回路の設計を初めて行うときは、過去の経験とは大きく異なりますので、ちょっとドキドキします。

それまでと違って、分布定数回路で考えることが必要ですし、回路シミュレータも高周波用のものを使いますし、電磁界シミュレーションを駆使して寄生パラメータまで見込んで回路が正しく動作するかまでも確認する必要が出てきます。さらに加えて、それまであまり馴染みのなかった、Si LDMOS、GaAs HEMT、GaN HEMT、SiGe HBTなどの高周波デバイスの性質も考慮する必要も出てきます。つまり勝手が大きく異なるのです。

設計にあたって、ブロックに分けて考えていくところは他の回路と同じです。

このことをSSPA(Solid State Power Amplifier)を例に使って見てみましょう。この図は、2段構成のSSPAを簡略に表現したブロック図です。

ちなみに、SSPAは「固体電力増幅器」のことで、(真空管ではなく)固体素子のトランジスタを使って大電力を増幅する電子回路のことを指します。

分布定数回路の(「分布定数回路」関連ブログ参照願います)設計では常にインピーダンスの「整合(マッチング)」を意識するところに大きな特徴があります。

「整合」関連ブログ:
高周波回路の設計 ~整合とは~
『高周波マッチング工房』はじめました! ~高周波の職人技を提供~

まず、図の左の入力ポート①に高周波信号が入力されます。

このとき入力ポートより左側にある回路が、入力ポートから見た右側のインピーダンスに整合していないと、入力ポートから右側へ高周波信号が入っていきません。
ですからまず、1段目入力整合回路②で、入力ポートから見た左右のインピーダンスが一致するよう整合を取ることが肝心です。

次に1段目入力整合回路の右隣りには1段目ゲートバイアス回路③があります。

トランジスタをアナログ動作させるためには、直流バイアス電圧を加える必要があります。その電圧を加える回路がこのバイアス回路です。ここではSi LDMOS、GaAs HEMT、GaN HEMTなどのユニポーラ・デバイスを想定していますので、ゲートバイアス回路としています。
ちなみに、SiGe HBTなどのバイポーラデバイスでしたら、ベースバイアス回路となります。

直流電圧を印加するだけといっても、ここは高周波の世界ですから必ず「整合」の考えを適用しなければなりません。
さもないと、高周波信号がバイアス回路に侵入し、回路内で多重反射を起こすなどをして期待する動作が得られなくなるかもしれません。

ですから、高周波信号がバイアス回路に入らないようにバイアス回路を設計することが大切です。
一方、少し高度な技としては、このバイアス回路に増幅器の入力整合回路を兼ねさせるという手法もありますが、ここでは詳細は省略します。

次に、高周波信号はGaN HEMTなどのトランジスタ④のゲート電極に入り、増幅された信号はドレイン電力に出力されます。

なお、ドレインも先ほどのゲート同様、バイアス電圧を印加する必要があります。そのための回路がドレインバイアス回路⑤です。

GaN HEMTなどのトランジスタのドレインから出力された高周波信号は、段間整合回路⑥を通過します。

この段間整合回路は、1段目増幅回路の出力インピーダンスと2段目増幅回路の入力インピーダンスの間の整合を行う回路です。この回路が適切に設計されていないと、1段目から出力された高周波信号が2段目増幅回路に入っていくことができなくなります。

ここから右の回路については、既に説明した内容と同様ですので省略します。

高周波回路の理屈はシンプルなのですが、実際に設計してみると、なかなか簡単に期待する動作をしてくれないことを経験するものです。
理論を理解していることと、実践の経験を積み重ねていることが期待通りの高周波回路を設計することに不可欠なのですね。

高周波設計のプロに設計を依頼したり、自社が設計して適宜専門家にコンサルで助言を求めたりすることに一考の余地がありそうです。

よろしければ、以下の高周波に関する他の情報も参考にしてみてください。