電子機器と部屋の換気方針は同じ ~風の流れ先を考えてファンを配置する~

みなさんこんにちは。構造設計課の瀬角です。

WTIブログで部屋の換気と電子機器の換気には共通点があり、風の入口と出口を設けることを紹介させていただきました。

今回は、扇風機やファンを使って部屋や電子機器の内部の空気を循環あるいは換気する際に、ファンの出口側だけでなく入口側も重要であることを紹介します。

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【風の流れからファン配置を考える】

扇風機やファンで空間内部に空気を流す際、局所的に風を当てたい、あるいは空間全体に風を流したい等の目的があると思います。しかし、ファンの配置は、感覚的に行うだけだとその目的を達成できないことがあります。例として、電子機器の密閉筐体内部にファンを置いたときの風の流れを流体シミュレーション結果で説明します。

 

① 局所的に風を当てたいとき(図1)

部品Aに風を当てるためにファンを部品Aの近くに配置しています。風速分布図から、部品Aに風が強く当たっていることが分かりますが、風がファン近くの部品Aに当たることで風の一部がファンに戻ります(ショートサーキットが発生)。その結果、製品全体を流れる風が減るため、風の循環の効果が弱くなります。

図1 ファンと部品Aが近いときの流体シミュレーション

 

② 筐体全体に風を流したいとき(図2)

部品Aの遠くにファンを設置すると、部品Aに当たる風は弱いですが製品内部全体にファンの風を流すことができます。

図2 ファンと部品Aが遠いときの流体シミュレーション

 

このように、風を当てたい箇所がある場合にはその近くにファンを配置すべきですが、ショートサーキットが発生する可能性があります。風を当てたい箇所がない場合は、何もない空間に風を送ることで、空間全体で大きな風の循環を作るべきです。

 

【ショートサーキットの発生を防ぐには】

ショートサーキットの発生を防ぐためには何もない空間に風を向けることが有効ですが、部品の配置制約上、どうしても障害物とファンが近くなることがあります。このときは、ファンを壁面付近まで移動させて距離をとるのではなく、風の流れを誘導する仕切りを活用します。

 

③ ファンを筐体壁面に近づけたとき(図3)

ファンの入口と壁面が近いとファンへ風が流れ込みにくくなり、ファン入口側の気圧が下がります。その結果、ファンから出た風がこの負圧に引っ張られてショートサーキットがより多く発生します。

図3 ファンが壁面に近いときの流体シミュレーション

 

④ 仕切り構造を設けたとき(図4)

仕切り構造があることで、部品Aに強い風が当たってもショートサーキットの発生を防ぐことができます。この構成は、局所的に風を当てつつ製品内部全体に風を流す方法として有効です。

図4 仕切り構造を設けたときの流体シミュレーション

 

【ファン・扇風機は入口側にも配慮する】

これらの換気の考え方は、電子機器の換気設計の他にも、日常の部屋換気にも適用できます。
部屋内部を換気する際に、風の流れ先を考えて扇風機を配置することで、「実は部屋全体を換気できていない」ということを防止できます。

温度や流体は身近な事柄であるため起こる現象をイメージしやすいですが、一方で実際はそのイメージに反した現象が起きていることもあります。熱流体シミュレーションはそれらの現象を可視化でき、実情を正しく理解することで、問題を解決する助けになります。

熱設計でお困りごとがございましたら気軽にお声がけください。

 

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