ノイズ対策の基本的な考え方

テクノシェルパ技術コンサルタントの原田です。

今回からノイズ対策について書かせていただこうと思います。ノイズを抑制する方法は種々ありますが、基本的なノイズ対策手法として次の4つに分類されることがあります。

(1) シールディング
(2) ワイヤリング
(3) グラウンディング
(4) フィルタリング

これらのうち、今回はシールディングとワイヤリングについて説明したいと思います。

 

<シールディング>

製品内に存在するノイズ源やアンテナとして働くケーブル/パターンなどから放射される電磁波を、製品内に閉じ込めて、外に出ないようにする手法です。その特徴として次のようなものがあげられます。

  • 導体が電磁波を反射する性質を利用し、電磁波を製品内部に閉じ込める。
  • 放射エミッションに有効。伝導エミッションでは効果を期待できない。
  • 製品筐体の接合部の隙間や空隙は、ノイズを製品外部に放射させるアンテナとして作用することがある。ノイズとなる電磁波の波長λに対して、この隙間などの長さがλ/2であると効率よく放射され、短いと放射されにくくなる。
  • 完全に囲えれば理想的だが通常、製品にはケーブルなどが存在する。その部分には他の方法による対策が必要。

これらの性質から、シールディングを行う場合の注意点として、筐体の隙間や空隙については、例えば換気口の穴を小さなものにしたり、ガスケットで埋めたりするなどの対策が必要となります。また、ケーブルが外部に出ている場合などはフィルタリングなど他の手法も併せて用いることになります。

 

<ワイヤリング>

機器内や機器間配線でのノイズ結合を考慮して、ノイズを低減させる手法になります。ノイズを結合させない、あるいはノイズを打ち消しあうようにすることでノイズが外部へ流出することを防ぎます。その特徴は以下のようになります。

  • ケーブルやパターン間での電磁誘導や浮遊容量、アンテナによるノイズの伝搬 / 結合を、距離を設けることによりノイズの流出を低減させる。あるいはノイズが打ち消しあう結合を強めることによりノイズを低減させる(ツイストペアケーブルなど)。
  • 配線をきれいに束ねるのはEMC的には不利になる事が多い。
  • 機器内の結合状況は組み立ててからでは評価が困難。組み立て前に電流密度の高い場所を把握しておく。(電磁波可視化システムが有効)
  • 伝導エミッション、放射エミッションとも有効。

ツイストペアケーブルについては下に示したイメージ図を参照ください。ツイストしなければ同じ方向に磁束が発生するところが、ツイストすることにより、撚った線の隣同士の部分から発生する磁束が打ち消しあう方向になり、全体としてノイズを低減させることができるというものです。

 

 

配線をきれいに束ねるというのは不利、という話はあくまで経験則ですが、例えば下図のようなケースを実際に見たことがあります。

 

 

これでは折角、フィルタでノイズを落として出力側ケーブルの信号をきれいにしても、束ねたところで入力側ケーブルのノイズが結合してしまい意味が無くなってしまいます。

このような例だと笑い話で済むかもしれませんが、プリント基板の配線パターンでこのような事が起こっているかも知れませんので、十分注意が必要です。

 

次回は残る2つの分類(グラウンディングとフィルタリング)について説明致します。

 

当社にはiNARTE認定のEMCエンジニア、経験豊富なEMC対策・評価のプロフェッショナルがおります。皆様のお困りごとの解決に是非、EMC対策コンサルサービスをご利用ください。

 

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